終了
企画展
2F

加賀毛針ー鮎との知恵比べが育んだ用の美ー

2012/4/2(月) 6/3(日)

会 期:2012年4月2日(月)- 2012年6月3日(日)
展示室:2F 第3展示室
作品数:約153点

工芸品の域にまで高まった加賀毛針は細かな工程を幾つも経て完成されます。 川虫を模した形状は、毎年少しずつモデルチェンジされていますが、この毛針をじっくりと見た事のある人は少ないでしょう。 この企画展では、毛針の制作工程に主眼を置いて、その道具等と共に加賀毛針の全体像を紹介します。

加賀毛針の歴史は古く、起源は定かではないが天保5年(1834年)には、すでに江戸でも名を知られていたといわれます。
当時、アユ釣りは万人に許されていたわけではなく、武士にだけ許されていたものだったので、アユ釣りを嗜む武士たちは、縫い針を自分で釣用に曲げて、毛をつけて、自分で毛針を作っていました。
江戸時代、幕府は、前田藩が力を蓄えないように厳しく監視しており、公に武道の稽古に励むことができませんでした。
そこで思い付いたのがアユ釣りです。 刀の代わりに釣り竿を上下に振る動作は、遊びの一部ですが、武士にとっては、岩場のある渓流を歩くのは、足腰の鍛錬になりました。
アユ釣りは、人間とアユの知恵比べであり、色とりどりの毛をつけることで、いかにアユを錯覚させるか。カゲロウや川虫に似せて、キジ、ヤマキジ、孔雀の羽や漆、箔、皮などを針につけていきます。前田藩の武士たちは、この釣りに独特の美意識を働かせていたのでした。

この企画展は、1575年に創業し、以来430年余の歴史を誇る加賀毛針の老舗「目細八郎兵衛商店」のご協力を頂き、毛針をじっくりと見て・知って頂く為の企画展です。

<第20代当主目細勇治さんからのメッセージ>

毎年6月16日に金沢を流れる犀川、浅野川には沢山の鮎を狙う太公望の姿が見られます。 この姿は昔から変わらない金沢の文化であり、まさに「趣都金澤」の言葉があてはまる風景です。この文化を将来に残すため、昔からの伝統技法を継承し、美しくクオリティーの高い毛針をこれからも作り続けてまいります。

<目細八郎兵衛商店の紹介>

目細八郎兵衛商店の伝統は、先祖代々加賀藩の御用商人として、縫い針の職人を営んでいた17代目当主が、鮎毛針を作るようになることに始まりました。
創業四百年余の歴史の中で、4000点もの種類を作ってきましたが、現在その総てを提供できるわけではありません。その年の鮎の状況を見て手を加え、復刻することも可能です。近年河川の濁りのためか、ラメなどを使った派手な毛針が好まれるようになりました。また野生動物保護から人工の素材を用いなければならないことも多く、鮎と人間の知恵比べも21世紀型になって来ています。