終了
企画展

絞る - 京都絞り職人衆の挑戦 -

2013/3/30(土) 4/30(火)

会 期: 2013年3月30日(土)- 2013年4月30日(火) ※ 最終日は15:00まで
展示室: 2F 第4展示室
作品数: 35点(世界の名画10点、絞り技法見本16点、絞り技法布8点、絞り台1台)
  1.モナリザ     2.笛を吹く少年
  3.日傘をさす女性  4.睡蓮
  5.落穂拾い     6.ゴッホの自画像
  7.ひまわり     8.マンゴの花を持つタヒチの女達
  9.着衣のマハ    10.踊り子と扇子を持つ女性

この企画展では、手をこまねいていれば失われていく多岐にわたる絞りの技術を保持し、
次の世代に伝えていくために立ち上がった京都絞り職人の挑戦を見て頂きます。
職人の技の保持を目指しつつ、同時に見る人達にも楽しんでもらいたい、そんな想いで制作された「世界の名画」をご覧いただき、職人の心意気を感じて頂ければと思います。

1000年以上の歴史を持つ「絞り」は、時代と共に様々な技法が編み出されてきました。
しかしながら、多くの技術がすでに失われ、又、失われようとしています。
そのような状況に対して京都絞り職人衆が出した1つの答えが「世界の名画」を様々な絞りの技術を駆使して制作するという挑戦でした。伝統工芸の技術伝承と保持をどのようにしていくかという問題は産地を問わず普遍的な問題であり、この企画展では、他産地や他産地の職人たちがどのようにこの問題に立ち向かっているかを紹介します。

<京都交栄会(出展者)紹介>
京都絞栄会は、昭和14年、絞りの職人が集まり結成したグループで、元々は職人の親睦会からスタートしました。絞り染めは、様々な工程を全て分業にて行われています。
工程には、下絵、下絵刷り込み、絞り(各技法毎に職人が異なります)、染色、糸解き、湯のし等があり、専門の技術者がこの道20年、30年、40年といった経験を有し、熟練した技を持っています。
これらは全て手作業で行うもので、職人同士のチームワークや、職人同士をコーデイネートする事が大切になります。それぞれの職人の技は、親から子へ受け継がれ、この京都絞栄会でも、親子三代に渡り共に仕事をするメンバーもいます。
又、京都絞栄会は、昭和60年より毎年テーマを決めて、屏風、額等の作品の製作、後世に残す活動を始めました。京都にて開催する京都絞りフェアにて発表する事を目標としておりましたが、最高の技術を用いる事により技術を保存し、又、新しい技術も取り入れる事により技術革新にも繋がってきました。「自分の仕事が後世に残る。数十年後の職人が見た時に、驚く様な仕事をする。」これは、大変な仕事です。年々、自らハードルを高くしてきました。職人全員が一つの目標に向かって大作の制作を行う事が、京都絞栄会の職人の誇りと喜びにもなっています。

今では、絞りフェアは全国に広がり、平成9年より「京都絞りフェアin銀座」、平成18年より「京都絞りフェアin福岡」が毎年開催され、京都絞栄会の作品が会場を飾っています。平成13年、京都絞栄会の作品を、保管展示するスペースとして、又、小学生以上の子供達、観光客を対象に絞り体験が出来る施設として京都絞り工芸館が設立されました。国内外問わず、多くの方に絞り染めの魅力を伝えています。

<出展者からのメッセージ>
絞り染めは千余年の歴史を誇る日本最古の染色技法であり、古来より女性の憧れとして、着物、小物等に利用されてきました。今日では、「きもの」という枠を超え、その洗練された技術、緻密さ、美しさは洋装、額、屏風などの美術工芸品としても高く評価されています。

中でも「京鹿の子絞」は京都で産出される絞り製品の総称であり、代表的なものに染め上がりの粒が小鹿の背の斑点のように見える「疋田絞(鹿の子絞)」が挙げられ、江戸時代にはこの技も全盛期を迎えますが、一方で絹布一面に施された総鹿の子絞は、贅沢品とされ禁令の対象ともなりました。
その技法は、染め分けに用いられる「桶絞」、「帽子絞」や括り染である「疋田絞」、「一目絞」、「傘巻き絞」など多種あり、染液の中に浸して染める「浸染」により染色され、あたたかく深い味わいを感じさせます。

「絞り世界の名画」は、京の絞り職人衆、京都絞栄会のメンバー約40名が分業により制作したものです。この素材感を最大限生かす方法として油絵の風合いを絞りで表現することに挑戦、 「絞り」という限られた表現方法の中で抜染等の技法を駆使し、工夫を重ねる事により、独特の凹凸感を表現しました。

1300年という絞り染めの長い歴史の中で、先人の知恵の積み重ねにより多くの技法が生まれ、そして消えていきました。中には今となっては再現不可能な技法、又、新しいアイデアで生まれた技法も多数あります。 「絞り技法見本」は、京都絞栄会が70年に渡り、絞り一筋に仕事をしてきた中で、制作、入手、保存してきました多種多様な現物生地見本を、整理、解説を加えたものです。
今回の公開は、その一部ではありますが、京都の絞り職人の工夫、熱意を感じて頂ければ幸いです。

この度、私共、京都の絞り職人にスポットを当てて頂き、このような展覧会を催して頂きました石川県立伝統産業工芸館様に感謝いたしますと共に、京都と同様、多くの伝統工芸を有する石川県の伝統工芸職人の皆様にエールを送りたいと思います。どうぞごゆっくりご覧下さい。 

(京の絞り職人衆 京都絞栄会 代表 吉岡信昌)