ろくろ挽きの年輪 ー 山中漆器加飾挽きの世界 ー
2012/8/2(木) ~ 9/30(日)
会 期: 2012年8月2日(木)- 9月30日(日)
展示室: 2F 第4展示室
作品数: 約70点
共 催: 財団法人山中漆器産業技術センター
漆器というと「漆塗り」のイメージが強いのではないでしょうか。
しかしながら、山中漆器は、16世紀末に越前から移住した木地師がその技術を伝えたことが始まりと言われており、初期のころは漆をぬらずに山中温泉に湯治に来る旅人達にお土産ものとして売られていました。この木地挽きの技術はその後長い年月をかけて進歩し、洗練され、今に受け継がれてきました。
この企画展では山中の木地挽きの中でも、特に加飾挽きに焦点をあてています。加飾挽きには様々な種類があり、その数はおよそ40種と言われていますが、その中で、今回は代表的な22種を取り上げ、イラストを使って分かりやすく説明し、且つ、それぞれの加飾挽きに用いる道具と共に紹介します。また、実際の作品には複数の技法が使われているので、そのような具体例を実際の作品で見て頂きます。
<加飾挽きについて>
加飾挽きとは木地を轆轤(轆轤)に固定して、回転させながら削ることによってつくられる様々な模様または技法のことです。大まかに分けると環状と渦状の他に飛状(とびじょう)があり、それぞれ道具と加工方法が大きく異なります。加えて、これらの道具と加工方法を組み合わせることによって無限の模様を生み出すことができます。この後の漆をぬる工程でカンナの切れ味が如実に表れるので、加飾を入れている間は途中で研がずに最後まで仕上げる技術と集中力が求められます。
環状: 回転する木地の外側から中心に向かって(あるいはその逆)一本ずつ等間隔に入れていく。
渦状: 回転する木地の中心から外側に向かって一気に模様をつける。カンナを運ぶ速度と、轆轤の回転速度との間合いで模様が大きく変わる。
飛状: 弾性のあるカンナをつくり、そのバネを利用しては戦場の連続模様をつける。回数を重ねること で密度の高い模様にすることが出来る。
<メッセージ>
欧米諸国に比べ、日本は社会文明の成熟するまでに時間がかかりました。しかしその間に自然との関連と調和を成熟させてきました。それは自然素材を精神性と共に巧みに利用した工芸品の中に見られます。
山中漆器は、ここ金沢から車で南に1時間ほどいった福井県境にある山中温泉街とともに発展してきた漆器の産地です。木と樹液(うるし)からつくられる漆器は、全国に23の産地があり、日本を代表する工芸品です。その中において山中漆器は最も優れた挽物木地を特徴としています。このたびご紹介する加飾挽きは、挽物の製作過程で行う技法のひとつであり、山中漆器を代表するものです。
美しく挽いた木地は塗りに入ってからも仕上がりに違いが出ます。職人は木地師の誇りをかけて、回転する木地に全神経を集中し、刃を立てて挽く一本にすべてを注ぎ込みます。挽物木地師が付ける装飾模様は、それぞれが刃物から独自の工夫をして作っているため独特の個性があります。加飾挽きには厳密なものから自由でのびやかなものまで大別しておよそ40種あると言われていますが、今回はその中から代表的なものについてご紹介します。何卒ご高覧賜りますようご案内申し上げます。
(財)山中漆器産業技術センター所長理事
山中漆器木地挽物技術保存会会長
川北良造